有価証券報告書(開示)の流れ
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上場企業で必須の業務、開示業務。

何をしたら開示書類ができあがるのかなんとなくはわかっているものの、実際の作業になると結構あたふたとする仕事です。

というのも、開示書類のミス次第でその企業の経営陣の質や企業そのものの信憑性を問われたり、追加で訂正の文書(適時開示)をする大きな手間が発生するので、本気でミスれない仕事です。(筆者も開示業務をしておりましたが、この時期はピリピリとした空気が社内に漂っておりました…)

本記事では大枠の流れと参考になる資料、経験をまとめていきますので今後上場企業での勤務を目指される方やこれから担当となる方の参考になれば幸いです。

■有価証券報告書 開示までの流れ(※3/31を決算日とする)
有価証券報告書の提出は決算日から3ヶ月以内と決まっています。
ですので3/31決算⇒6/30開示。

と、その前に決算短信も出す必要がありこちらは45日以内となっているため3/31決算⇒5/15開示。

短信と有報はそれぞれ記載するボリュームの違いもありますが提出する先にも違いがあり、
決算短信⇒各上場取引所(TDネットというシステムで提出)
有価証券報告書⇒金融庁(EDINETというシステムで提出)
となっています。

⓪根回し。
今期の決算に向けて行わないといけない処理(トピックス)を洗い出します。
私は飲食企業に勤めていたので、閉店することが決まった店舗や、黒字or赤字がどれくらいでるのか(必要に応じて業績の上方修正・下方修正を開示する必要が出てきます)、組織の大枠に変更があるか、キーマンとなる人を捕まえてヒアリングし、いつまでに、何の資料がもらえるのかを全て期日化します。

何がトピックスになるのか全く分からないかと思いますが、その場合は同業他社の適時開示あるいは有価証券報告書を5、6社×3年分くらい見てみれば情報のアンテナが張りやすくなりますのでオススメです。

①単月の月次締め(3/31を決算日とする)
まずその月の決算を確定する必要があります。こちらはその会社でやっている毎月の業務をそのままやれば大丈夫ですが、若干期日を早めて確定させられると次のステップが早く対応できます。

②四半期処理・年次処理
四半期に1回の業務、年に1回の業務を行います。私が勤務していたのは飲食企業でしたので貸倒引当金の設定であったり、店舗の減損処理、協賛契約等の更新&会計処理を行いました。
業界や企業によってやるべきことは様々ですが、上場して数年経過している企業であればその会社の「決算整理仕訳」を見れば大枠は理解できます。
これで仕訳が理解できない状態なのであれば、仕訳の摘要欄をもっと詳細にしたり、ご自身の知識UPが必要かと思います。(エラそうに言ってますが私もたまにわからないものがあるのでどこまでいっても学びの日々です)

③子会社対応
子会社がある会社であれば、子会社から財務諸表をデータで受け取る必要があります。こちらは、結果的に連結するのでエクセル等がやりやすいと思います。なお、できるだけ親子間の勘定科目はそろえた方が後々ラクです。
どこかの科目に振替て処理する手間が省けます。

④財務諸表のチェック⇒入力処理
各会社によると思いますが、財務諸表を監査法人にチェックしてもらいます。
問題無ければそのまま財務諸表(B/S、P/L、C/F、S/S)という形に入力をします。
入力するのは「プロネクサス」「宝印刷」が提供しているシステムへの入力となりこのシステムはかなり特殊なシステムですので入力に困ったら両企業のヘルプデスクに確認をとりましょう。

また、数字は入れるだけですが文章を記載する必要があるものについては、プロネクサス、宝印刷から送られてくる手引書を開き該当部分を細かく読んで作成を行います。この手引書はかなり重要ですので捉え間違いがないよう、上長か監査法人に確認しながら対応をすると良いです。

⑤チェック業務
⑤-1全部埋まったら、まずはセルフチェックです。できるだけ入力日の翌日など、入力した日と違う日で行うと良いです。人間意外と面白いもので今日さっき入力したものには先入観などが自然と出てきてチェックしたつもりで間違っているものを合っていると誤ご認識してしまいがちです。一回帰宅して寝て、リフレッシュした頭でチェックをすると良いでしょう。

また、文章や数字上あっているけれどデータ構造そのものでエラーが発生するということがあります。XBRLという特殊な言語を使って開発されているのですが、そのエラーを解消する必要があります。エラーはエラー内容を読んでわかるものは自分で解消できますが、専門過ぎてわからないものもありますのでその場合はプロネクサス等に問い合わせましょう。

⑤-2セルフチェックが終わったら上長チェックに回します。修正依頼を受けたものはすぐに直しましょう。

⑤-3監査法人によるチェック。監査法人も社内の方ではないので修正指摘を受けたら上長と相談の上対応をしていきます。

最後もう一度、データを吐き出したときにエラーが出ないか確認をすればデータは修正可能です。

チェック業務、と一言で記載しましたがめちゃくちゃ重要かつ結構大変な作業で、一概にどう大変なのかとかはケースバイケースなのでなんとも言えないのが難しいところ。集計していくうちに、損益計算がズレてしまっていたのが判明して税金計算もズレて~~という連鎖反応の修正をしたことはありますが期日はズラせないのでかなり焦ります。どこを変えるとどこに影響が及ぶか全体像を把握しておくと良いでしょう。

⑥開示作業
簡単にいうとプロネクサスや宝印刷が保有するシステムからデータをDLしてそれをTDネット、EDINETにアップロードするだけです。

TDネット(短信)は機能的に予約での開示ができるので安心です。
開示日時は各企業によって違いますので確認をして進めます。
手順についてはプロネクサスや宝印刷のヘルプデスクに電話するとかなり丁寧に教えてくれますのでオススメです。2~3回やってみればわかるようになるのであとは場数の問題です。

一方でEDINETは予約機能がありません。なので、開示のボタンを押すと即時反映されてしまいますのでものすごく神経を使います。この担当をする方は開示日はもはや生きた心地がしません。

開示の日と株主総会の日を同じ日に設定している会社もありますので、そうすると管理本部の人員はみんな総会の方に行くので一人or二人で社内待機しておいて開示時刻まで待ちます。
※開示の時間前後は電話対応も一切出ないでとにかく時間ぴったりに開示することだけを考えます。そんな難しい作業でもないですが。。

⑦開示確認
開示のボタンを押したら、実際のTDネットやEDINETできちんと上がっているか確認をします。ネットの関係でUPがされていない、等を最大限回避するため最後までしっかり確認をするとよいでしょう。

と、開示に関しての一連をざっくり下記ましたがいかがでしたでしょうか。
めんどくささや、理解力不足、作業量の多さはありますが落ち着いて対応することが何より大事です。若手のうちは1~10全部担当することはないですが、スケジュールだけは厳密に共有しながら上長と進めると問題が起きにくいと思います。

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